カウンセリング受けたら悪化した?心理相談の適切な適用について

カウンセリングよって悪化することはあるのか?

カウンセリングによって受ける前よりも状態が悪くなった、という話は聞かないではない話です。人が現状よりの改善を目指して訪れるカウンセリングによって悪化してしまうとはどういうことでしょうか。これはカウンセラーが十分に気を付けていれば普通防げることなのですが、ではどのような状況があり得るのか?そのことについて少し考えてみたいと思います。

統合失調症の方がカウンセリングを受ける、または自分の担当している精神科の患者がカウンセリングを受けることを主治医が嫌がる、ということがあります。以前程では無いように思いますが、現在でも時々聴く話です。中には「統合失調症に対してカウンセリングは禁忌です」という方もいます。本当でしょうか?

確かに統合失調症などの方に対して心理相談を行うことで悪化することはあるかもしれませんが、悪化した面接というのは厳密にはカウンセリングという現実との付き合い方の話をしているのではなく、精神の内面世界を話題にした心理療法をしていた場合がほとんどだと思います。特に大昔は統合失調症を心理療法で改善できるのではないかとの試みをしていましたから、その悪影響を被った方は多かったろうと想像します。ですから主治医も嫌がったのでしょう。

因みに通常心理相談のことをカウンセリング、と呼ぶことが一般的だと思いますがアドラー心理学では心理相談をカウンセリングと心理療法の二つに分けて考えています。

現在では一般に統合失調症の方にそのような方法を採用するカウンセラーはほとんどいないだろうと思いますし、統合失調症を「治す」ためではなく統合失調症の方の生活を「支える」相談はあった方が良いですし、話題をそこに絞るのであれば安全に相談が可能です。

ですから決してすべての心理相談が統合失調症者にとって禁忌なわけではありません。今でも禁忌としてある専門書があるかもしれませんがカウンセラーが「何ができて」「何ができないか」を弁えていれば安全に相談をすることが可能です。

うつの方がカウンセリングを受けていたにも関わらず自殺してしまった、ということも起こりえます。しかし希死念慮が強い場合、カウンセリングは普通それが安定するまで行いません。薬物療法や養生を通じて安定してからうつになりにくい認識を持つ、生活を送るための相談は考えられます。来談者が希死念慮などを訴えてくれていればそれを防ぐための方法を話題にできるでしょうし、守秘義務を超える案件ですから家族に伝えることも可能かもしれません。また来談者がうつであることを知っていれば、もしくは気が付けばカウンセラーは十分そのことに配慮できます

統合失調症やうつの方でなくとも悪化した、と訴える方はいるかもしれません。情動の不安定な方に精神内界を深く掘り下げるような面接をした場合、そのようになることがあるかもしれません。そのような場合、もしかするとカウンセラー側の見通しが甘いものであった可能性はあり得ます。

来談者の問題を対人関係のレベルで話題にするか精神内界に踏み込んだ話をするかはまるで違います。このことを十分認識していない専門家がいることは残念なことですが心理相談そのものは適正に判断し、適用されるならば技術的に悪化させる可能性はかなり抑えられるものです。

残念ながら失敗されたと感じる面接をされた方もいらっしゃるかもしれませんが、もし心理面接が助けになると思われたことがあるならば一度の失敗で全ての心理面接を判断するのは羹に懲りてあえ物を吹くの諺を地で行くのに似ています。

どうぞ恐れずに自分にあった専門家を探してみてはいかがでしょうか。

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