不登校のカウンセリングー親の立場からー

親のニーズについて

子供が学校に行きたがらない、こういう事例が報告された当時はそれで論文が書けるほど珍しかったようですが、それから数十年、今では各クラスに一人以上いても当たり前というくらいに一般的な現象となってしまいました。
カウンセリングの現場からこういった事例についての相談を見てみると、不登校の本人が何とか登校できるようになりたい、と言って相談を希望するケースはほとんどなく(皆無ではありません)、相談を希望されるのは大体その子の母親がやってきます。子供は学校に行きたくない、のですから多くの場合行くための相談をしようとはしてきません。

不登校グラフ

お母さん方のニーズはいろいろですが、その中でポピュラーなのが「不登校の子をどうやったら学校にいかせられるか」というものです。
しかし残念ながらカウンセリングで直接このニーズを満たすことはできません。多くのお母さんがこういう状況に際して問題を読み間違えて誤った公式を立ててその解を求めようとしているからです。

問題の読み方

問題の読み間違えその①
まず読み間違いの一つは症状別に出来合いの処方箋は存在していないということです。体の病気に例えるならば、「熱がでた」は「学校に行かない」と対象させて症状と呼ぶことができるでしょう。では熱の背景は何か?風邪?結核?肺炎?インフルエンザ?いろんな可能性がありますし、それぞれに対処法も違うわけです。不登校の背景はなんでしょう?わかることもあるしわからないこともあります。多くの場合はわからないのです。そこに対して親にもできる「こうすればいいですよ」はありません。

問題の読み間違えその②
「一般的な処方箋は無いのはわかりました、ではどうしたらいいのでしょう?」と個別の対策を求めたくなるのが当たり前とは思います。しかし問題を詳しく精査すると不登校という問題は実は二つの要素から成り立っていることに気が付いていただけるでしょう。

A.子供が学校に行っていないし、何かつらいことがあって苦しげである。
B.親が学校に行っていない子を見ると子供の将来のことなどが案じられて不安に駆られる。

この二つは全く別の問題です。カウンセリングで話し合って効果が確実に見込めるのは自分に直接関係のある問題だけです。この場合はBがそれに当たります。しかし親はAに問題意識を集中させているでしょう。ですから問題は誤った公式をあてはめられているということになります。

また、不登校の子をカウンセラーに会わせればいい、と考える方もいらっしゃいます。これはAのパターンが親からカウンセラーへの代打になっただけです。もし会ったとしてもこのような状況ではカウンセラーにも大したことはできません。同じ理由で不登校問題専門のカウンセリングルームなどもありますが、私は懐疑的な立場です。
カウンセリングが効果を持つのはクライアントが自分の課題を引き受ける志をもってカウンセリングに臨んだ場合です。

他所のカウンセラーはおそらくこの記事でいう所のA,Bの区別もなく引き受けてくださることも多いだろうと思いますが当オフィスのカウンセリングは以上のように考えています。

さて、ではAの子供は放置されたまま何の手当もなされなくて良いものでしょうか。そんなはずはありませんよね。

つづきます

この記事はアドラー心理学の知見に基づいて書かれています。

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