「共感」について
「共感」という言葉を辞書で引くと「他者の考えや感情をその通りだと感じること、感じる心のこと」というような定義が載っていると思います。
カウンセリングの世界では重要な姿勢である、カウンセリングのカギである、などと思われている節を感じます。
ではカウンセリングで問題が解決することの本質はカウンセラーが来談者の話に共感するから効果がでるのでしょうか。
カール・ロジャースのしたこと
カウンセリングで「共感」と言われるようになったのはカール・ロジャースの来談者中心療法が東大名誉教授の佐治守夫氏が1950年代アメリカで学び、その後日本に紹介して以来であると思います。ロジャースの理論とは
来談者が自らを受容したとき、変化が訪れ成長が促される、その環境を促す存在としてカウンセラーが存在し、そのための方法はカウンセラーが来談者に寄り添い、成長を妨げることなく来談者に共感すること。
ロジャースや彼の心理学を受け入れている人たちはこのように考えているといって良いと思います。
とても人間存在に信頼を置いた楽観的で温かく希望に満ちているような明るい印象を与えてくれるので日本ではとても一世を風靡した考え方です。何より今までの心理学はヨーロッパで医者が開発した複雑な理論であるのに対して心理学者が立ち上げたシンプルな理論であったところも取り組みやすかったことでしょう。
来談者中心療法の影響はいかなるものだったのか?
(日本のロジャリアンは)全く質問せずに来談者が自らを語るのを邪魔しないようにして、時に話をまとめたり相手の感情を言葉にしたりするなどの対応をするようです。その結果来談者は自由に自分のことを語ることができた、と思う人がいる一方で、何もアドバイスしてくれない、話を聴いてくれるだけ、との評価があります。
現在の来談者中心療法の評価はどのようなものであるのか?
資料が手元に無いので明言はしませんが、恐らく効果なしではないかと思います。ロジャースはこの技法を大学の知的に優れた情緒面では比較的安定した来談者を対象に開発しました。対象者をこのような人々に限定したときには若干のエビデンスがあったかもしれませんが、一般的には効果なしだと思います。もっとも日本のロジャリアンはいろいろな反論をなさることと思います。
共感は解決とは関係ない
アドラー心理学では「共感」が来談者の問題を解決するとは全く考えていません。共感されるとおそらく来談者はとても快適に感じられると思うのですが、この快適さは日本人はこころが癒される、という言い回しに近い、あるいは同義としてとらえているように思われますが、こころが癒されるからカウンセリングが効果を持つのではありません。
のちの記事に続きます。
※書きました。
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