はじめに
子供同士のトラブルが発生し、それぞれの言い分が食い違うとき、大人としてどのように対応すべきか悩むことがあるでしょう。特に育児や教育に関わる立場の大人にとって、この問題は避けて通れません。
本ブログにもその回答を求めてたどり着く方がいらっしゃるようですが、これまで直接このテーマについての記事を書いたことがありませんでした。しかし、ニーズがあるのならばと思い、今回執筆することにいたしました。
ただし、この問題には多くの状況が考えられ、一概に結論を出すことは難しいです。例えば、
- 幼稚園や学校の先生の立場で考えるのか、保護者の立場で考えるのか
- トラブルが同級生の間で起こったものなのか、兄弟の間で起こったものなのか
といった違いによって、対応の仕方も変わってきます。検索した方がどの立場での答えを求めているのかはわかりませんが、この記事では特に保護者の立場に焦点を当て、アドラー心理学の視点から考えてみたいと思います。
一般的な対応方法
多くの場合、子供同士のトラブルに直面したとき、大人が考えるべきことは以下のような点でしょう。
- どちらの話も公平に聞く
一方の意見だけを鵜呑みにせず、関係する子供たち全員の話をしっかりと聞きます。それぞれの言い分に耳を傾けることで、感情的にならずに状況を把握しやすくなります。 - 事実を確認し、状況を推測する
主張が異なる場合、証言だけでは正確な事実を把握するのが難しいこともあります。そのため、第三者の話を参考にしたり、状況から合理的に判断したりすることが重要です。 - 子供の言葉をそのまま信じすぎない
子供は意図せずに事実を誇張したり、都合の悪い部分を省いたりすることがあります。そのため、話の内容を慎重に吟味し、できるだけ客観的に判断する姿勢を持ちましょう。 - 感情的にならず冷静に対処する
トラブルに直面したとき、大人が感情的に反応すると、状況がさらにこじれることがあります。冷静に対処し、子供たちが自分たちで解決策を見つけられるようサポートすることが大切です。 - 保護者同士の適切なコミュニケーションを意識する
子供同士の問題に親が過剰に介入すると、感情的な対立が生じやすくなります。保護者同士で直接話し合う場合は冷静さを保ち、必要に応じて学校など第三者を交えて話し合うことも選択肢の一つです。
アドラー心理学の視点から考える
アドラー心理学の観点から見ると、子供同士のトラブルにおける一般的な対応方法には大きな問題があると考えます。それは「大人が子供の問題を解決しようとする姿勢」そのものが誤りであるという点です。
学校の教員であれば、保護者の意向を無視できない事情があるため、問題に介入せざるを得ない場合もあるでしょう。しかし、親の立場であれば話は別です。
アドラー心理学では、問題が「誰の課題なのか」を明確にすることが重要とされています。今回のケースでは、トラブルを解決する責任を持つのは子供自身です。親は、その解決の過程を見守り、必要であれば手助けをする立場にあります。
具体的には、
- 子供に問題の整理をさせる
- 自分で解決策を考えさせる
- 必要に応じてアドバイスをするが、解決は子供自身に委ねる
といったアプローチが求められます。人生で直面する様々な課題は、試行錯誤を重ねることで成長の機会となるため、大人が解決してしまうのではなく、子供に経験を積ませることが重要なのです。
過保護な社会が生む課題の肩代わり
しかし、現代の日本社会では親が子供の問題を解決してあげるのが当然と考えられがちです。このように「他者の課題に踏み込み、責任の境界を無視してしまうこと」をアドラー心理学では「課題の肩代わり」と呼びます。
昔は「子供のケンカに親が出るのは恥ずかしいこと」とされていました。しかし、現代ではそうした意識が薄れ、親が積極的に介入することが一般的になっています。
また、近年では未熟な親が増え、自分の子供が他者から迷惑をかけられたと感じると、まるで自分が侮辱されたかのように反応するケースも見受けられます。場合によっては、子供同士が納得しているにもかかわらず、親が納得せず騒ぎ続けるという事態も発生しています。
まとめ
子供同士のトラブルへの対処には、一般的な対応とアドラー心理学の視点の両方を理解することが大切です。大人が介入しすぎることなく、子供自身が問題解決の力を養えるよう支援する姿勢が求められます。
また、子供の成長には異年齢の集団で学ぶ環境が重要ですが、現代では同い年の子供ばかりが集まる状況が当たり前になっています。そのため、トラブルが不自然な形でエスカレートすることもあります。最悪の場合、旭川女子中学生いじめ凍死事件のような悲劇も起こり得ます。
そのような状況を避けるためにも、親としては子供の日常的な言動をよく観察し、適切な評価と支援を行うことが求められます。
本記事が何かの参考になれば幸いです。
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