リライト2020.2.14
子どもの様子に不安を感じ、心療内科を受診する保護者は少なくありません。専門家の診察を受けることは大切ですが、場合によっては逆効果になることもあります。今回はその理由について考えてみたいと思います。
子どもの心の問題と医療機関の選び方
心療内科医・精神科医は心理学の専門家ではない
精神科という言葉に抵抗を感じる方も多く、その代わりに心療内科を受診するケースがよくあります。しかし、心療内科医や精神科医は、心理学の専門家ではなく、主に脳や神経に医学的にアプローチする医師です。
診察の中で心理学的な話が出ることもありますが、時には適切でないアドバイスをすることがあります。医師の指示であるため、保護者はそれを信じて従いやすいですが、心理学的な見地からすると適切でないことも少なくありません。
また、医師の社会的地位の高さも影響し、「医師に相談しているのだからカウンセラーは不要」と考える保護者も多いのですが、その結果、適切な支援を受ける機会を逃してしまうことがあります。

医師の指示が適切でない場合
ケース① 誤った対応が推奨される
例えば、甘やかされて育った子どもが不登校になった場合、医師が「しばらくそっとしておきましょう」と指示することがあります。しかし、本来必要なのは、親が学習し、子どもに適切な働きかけを行うことです。
「そっとしておく」だけでは、社会的なスキルを学ぶ機会が失われる可能性があります。また、「拒絶すれば義務を免れる」と子どもが学習してしまうこともあります。
ケース② 診断名が症状を助長する
不登校の子どもが朝起きられないことはよくあります。この際に「起立性調節障害」と診断されることがあります。診断がつくと、保護者は「病気だから仕方がない」と考え、ストレスを与えないように配慮するようになります。
しかし、医療機関では保険適用のために何らかの診断名をつける必要があるという仕組みがあり、必ずしも診断が病気を意味するわけではありません。診断を理由に義務を免れることで、結果として生活習慣が乱れ、社会的スキルの発達が妨げられる可能性があります。
また、「朝起きられれば学校に行ける」と考え、薬物療法が試みられることもありますが、これは本質的な解決になりません。根本的な問題は、無意識のうちに「学校に行かない」選択をしていることにあるため、生活習慣を整えながら心理的なアプローチをすることが重要です。

心療内科医・精神科医が必要なケース
医療機関を受診することが適切な場合もあります。特に以下のようなケースでは、精神科医の診察が不可欠です。
① 投薬治療が必要な場合
統合失調症や双極性障害などの精神疾患が疑われる場合、投薬や入院が必要になることがあります。幻聴や妄想、極端な気分の変動などが見られる場合は、心療内科よりも精神科の受診が適切です。
② 自殺や他害のリスクがある場合
自傷行為や他者への攻撃性が強く見られる場合、安全を確保するために精神科の閉鎖病棟での入院が必要になることがあります。
心理学の知識を持つ医師もいる
多くの医師は心理学の専門家ではありませんが、中には心理学に精通し、カウンセラー以上のスキルを持つ医師もいます。私の恩師もその一人でした。
しかし、そのような医師は少数派であり、患者や保護者が医師の指示が適切かどうかを判断するのは難しいのが現実です。そのため、心理学と医学の専門性を理解し、それぞれの専門家を適切に活用することが重要です。
保護者にできること
① 問題を正しく認識する
子どもの問題を親が解決することはできません。親にできるのは、適切な支援を提供し、サポートすることだけです。子どもの人生の問題は、親の問題とは別であることを理解することが大切です。
② 子どもとの関係を健全に保つ
過度に介入すると、親子関係が悪化し、二次的な問題が生じることがあります。親子の関係を健全に保ちながら、適切なサポートを行うことが重要です。
③ 専門家を適切に使い分ける
医師とカウンセラーはそれぞれ異なる役割を持っています。私たちは、医師とマッサージ師、税理士と弁護士を使い分けるように、医師とカウンセラーも状況に応じて使い分けるべきです。
必要に応じて併用することで、最適な支援を受けることができるでしょう。
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