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職場の問題に答えるために始まった
臨床心理学が活躍する領域として大きく分けると「医療」「福祉」「教育」「司法」そして「産業」の5つの分野が存在している、と言われることがあります。 今回の記事は特にその中で「産業」の領域に関する疑問についてお話ししてみたいと思います。従業員支援プログラムとは
企業で働く従業員の福利厚生としてメンタルヘルスについて関心が高まってくると、余裕のある企業の中で産業カウンセリングに携わる者を雇用する、という所が出てきました。しかしやはり人件費や相談内容の守秘が徹底されるかどうかといった倫理上の問題もあるのでしょうか。現在では産業カウンセリングを提供する企業と契約をすることによってその役割を外部委託して経済的にスリム化しつつ社員のメンタルヘルスに配慮するというスタイルが定着してきたように思われます。もっともそれは良い効果ばかりがあった訳ではありません。カウンセラーが企業の内情に精通するということが無くなりました。また企業のシステム全体を俯瞰して何かを提案することもできなくなりました。しかしそれよりもっと本質的な問題があるように思うのです。 企業の中で提供される産業カウンセリングサービスはEmployee Assistance Program 略して
EAPサービスの構造的問題
さてEAP会社も支出を減らして収入を増やしたいのは顧客の企業と変わりません。ですのでカウンセラーも自社で採用している人数もありましょうが、多くの在野のカウンセラーと個別に契約をして紹介する、というサービスを行っているのですが、そこにも歩合を支払わなくてはなりません。 企業が無制限にクライアントを紹介してくるのを全部受けていたら立ち行かなくなりますから、企業との契約の内容によって全5回までの相談は無料、その後の継続を希望するなら任意で有料でサービスを受けること、などとなります。 無制限の契約も存在しますが、そのためには企業は随分高額な契約をすることになるのだろうと思います。 その結果、結構重い話題を持った方、絶対5回では方が付かないだろうと思われる方がいらっしゃいます。そしてタダだから来ているその方は自分の状況を顧みず、効果の出ないうちにカウンセリングを終了して去っていくことも多いのです。 経営者の関心を引くけれども実効性の薄いサービスが非常に多く見られるように思われて非常に残念です。また以前無料カウンセリングについての記事でも書きましたが、社員の支払いが全くないカウンセリングは良いカウンセリング構造ではありません。 企業内の問題として本人はニーズを感じていないのに半ば上司からの強制という形で来所される方もいらっしゃいます。 どうにもできません。 これらの問題はEAPが現在の形になったことで浮かび上がってきた構造的な問題だと思うのですが、中には「治さなくていいから気持ちよくして返せ」と言い放ったEAP会社の経営者もいました。 産業カウンセリングの構造的な問題を知ったうえで、なおかつ経済的利潤しか考えていない人もいるということです。自社のカウンセリングが効果がない事を承知したうえで金を稼ごうという姿勢にはあきれ果てます。 このセリフの中での「気持ちよくして」の意味合いについてはこことここで語らせていただきました。
それでもカウンセリングをあきらめない
産業カウンセリングのお陰で助かった、そんな人もきっといるはずです。 全てが悪いとは思いません。 しかし内側ではこのようないかんともしがたい構造的な問題が発生しているように思われます。 多くのクライアントは1度カウンセリングを受けてうまくいかないとそれきりカウンセリングに見切りをつけてしまう、ということがあります。 別なカウンセラーだったらもう少し違う展開があるかもしれない、と思ってトライする人の数