自閉症は治らないはずでは?
今回の記事のタイトルを見て、嘘つけ!と思った方はきっと自閉症の知識がある程度以上ある方
本当だったら!と思った方はもしかすると当事者のご家族であるかもしれません
先にお断りしておきますが、これは誇大広告による集客ではなく、私が大昔にした1回きりの経験で再現性はないし、自閉症が「治癒する」という意味での「治る」は常識的には私もあり得ないと思っています。
治ると主張する研究も色々あるようですが、だったらこの現状はなんでしょう?
もっとも私の専門領域ではありませんので最先端のことまでは私は知ってはいないのですが。
もう一度繰り返しますが、これはただの体験談です。
でも不思議なことは人生の中で起こることはあるのは事実で、それがこういう領域で起こることもあるのです。
障害者ボランティアに参加した際の出来事
今でこそアスペルガーという言葉が一般にも知られるようになってきましたが、彼はカナー型と言われる古典的に知られた自閉症の子でした。当時小学生高学年くらいだったと思います。
今から20年以上前の出来事です。
当時学生だった私は時々ボランティアサークルで縁のあった団体を手伝うことがありまして、その日はバザーのある日でした。しかし私の仕事はバザーではなく、障害児のお母さんがバザーで働いている間、近くの遊園地などで彼女の子供を預かること、でした。
その時にあったのがカナー型自閉症の仮名A君です。
カナー型の自閉症は知能指数も低い自閉症です。そして自閉症の特徴である意思の疎通の難しさがありました。自分の興味があるものを見つけた瞬間走り出すなどもあるため、いつも手をつないでいるのが基本です。会話で意思を疎通させるのが困難で、観覧車から降りる頃になると個室の中で手足を突っ張らせて降りるのに抵抗したため、係員に後で採算させてください、とお願いしてもう一周する羽目になり、彼の作戦を理解した私は2週目では無事に降ろす、ということをしたり、すれ違ったライダーカップルの持っているヘルメットに勝手に手を伸ばしたり、ということがあったため誤ったり、といったことを覚えています。
その日はなぜか私はいつもより機嫌が良かったので、彼によく話しかけていたことを覚えています。反応が返ってこないことは十分わかっていたのですが、勝手に相手の反応があるとしたらこんな感じかもしれない、という想定までして楽しく過ごしていました。そうでもしないと反応の無い相手とあんなに長い時間いるのはつらかったかもしれません。
夕方になり、お母さんにお返しする少し前位から彼の調子がおかしくなったのを覚えています。不穏になったのがなぜなのかはよくわかりませんが、なんとなく落ち着かず、奇声を度々発したりするようになりました。その状態で彼とはお別れしたのです。
間に違うトピックが入ってその後に続きます。
ベッテルハイムの嘘
自閉症は昔は脳の障害としてではなく情緒的な問題であるとみなされてきた時代がありました。そのために自閉症の子の母親はいわれのない有形無形のプレッシャーに耐えねばならなかったのです。このような現在からみると誤った論陣を張ったのは主に精神分析を専門にしていた心理学者だったと思います。
情緒的な問題であるならば心理療法的なアプローチが効果を持つはずで、それならばと多くの精神分析が自閉症の問題に取り組みました。数々のチャレンジと失敗があったはずで効果はなかったのに間違いはないのですが、そんな中ベッテルハイムという精神分析家が自閉症の改善に大きな効果があったという報告をしたのです。
結論としては結局データはでっち上げで、児童虐待の噂までささやかれます。
彼は最終的に自殺してしまうのですが、その背景にはこの辺りの事情も深くかかわっていたのではないかと推測します。
彼の行動の変化に驚く
その後、ずっとA君に会う機会はありませんでしたが母親の会のスタッフから「佐々木君が担当してからA君の自閉症が治ったんだよ」と言われ暫く魔法使い扱いをされたのでした。
そんなことってあるんだろうか、と正直思いましたが、その後彼の姿を見る機会がありましたが見違えるようにおしゃべりをしていたのです。知能は低いままでしたが自閉症の特徴とされている症状は無くなっているように思われました。
私のような働きかけをすれば自閉症が治るかもしれない、という話では一切ありません。でも人と人のかかわりの中では希に思ってもいないような出来事が起こるものです。
カウンセリングを通じて来談者や来談者の相手役の方が思ってもいない勇気を出したり、その結果考えてもいなかったような結果を引き出したり、ということもあったりします。
このような出来事を直接体験すると生物の持つ神秘というか可能性というか、その前に私たちはまだまだ謙虚さが足りないような気もします。
奇跡は期待するものではないと思いますが、前向きに自分と未来を信じていることは人生を送るうえでのコツだと思います。
※私自身ドクターではないので治ったという判断自体が本来は僭越なのですが、あくまで今日の記事は体験記です。