神経心理検査について

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 精神科やカウンセリングルームでは受けることの難しい神経心理検査のご紹介です。

神経心理学とは何か

 神経心理学とは脳機能のうち、認知領域をつかさどる部位が病変、変性、外傷、発達不全により十分な機能を発揮できないとき、その機能面から障害を明らかにし診断の参考、リハビリの計画策定のために活用される心理学のことを言います。具体的には高次脳機能障害といわれる脳に外傷を負ったことにより何らかの脳機能の障害を持った方々が中心的対象です。低次脳機能障害という言葉は存在しませんが、脳がつかさどる機能のうち認知などの情報の処理や統合に関わる機能を特に高次脳機能という言い方をします。

 一般なカウンセラーが相談に乗る対象領域は臨床心理学といわれる分野であり、脳神経機能の機能異常は相談の中心ではありません。発達障害の行動上の問題が対象となるくらいだと思われます。

 このように神経心理学はカウンセラーの仕事にかかわりのある領域でありながら臨床心理士、公認心理師の不得意な領域です。

 この神経心理学の領域で利用される検査のことを神経心理検査、神経心理学的検査と呼んでいます。

 

知能検査と神経心理検査は何が違うのか

 知能検査については他ページで解説してありますが、知能指数などの指標により被検査者の知的な能率を数字によってあらわすことで目に見える結果を出すことができるものです。

 しかし例えば知能検査の結果が振るわなかった場合、その理由が何であるかは知能検査からは詳しく評価することはできません。様々な原因が考えられる中、その中のいずれの理由によるものであるのかを特定する機能はないのです。

 そこでさらに低下している機能を絞り込み、その程度を調べるには別な検査が必要になることがあります。それが神経心理検査です。

 そのためどちらも脳の機能に注目した検査ですが用途が違いますし、神経心理検査では知能指数をすることは不可能なのです。

 

高次脳機能不全の社会適応の困難さ

 外見や動作には問題がないため、見た目では何も問題が無いように見えるのですが職場などで作業能力の低さが指摘され、業務の遂行に支障が出ることが多くあります。

 このような社会的不利益がしばしば発生するにも関わらず、適切な社会資源に結び付くことができずに能力の低い人、だらしがない人、などと評価をされて支援の必要な状態であることに本人も気が付きません。そのくらい社会に認知されていない障害であるといえます。

 これらの機能不全はさらに社会的な不適応を招いた結果二次障害を招く恐れもあります。

 

神経心理学が発達障害児・者に貢献できる理由

 高次脳機能障害の方々に活用される心理学であると先に述べました。しかし脳の機能不全は高次脳機能障害の方だけに起こるものではありません。高次脳機能障害の定義は外傷などにより脳機能が低下した状態であるため、外傷の病歴が無い関わらず同様の症状がある人々がいることが注目を集めてきませんでした。

 そのため精神科で職場での適応の困難さを訴えても知能検査だけをして低い能力を改めて確認するにとどまり、その機能不全な能力の質的な内容について関心が向けることが少ない、という状況が起こりがちです。

 また学習障害の人々に対しても具体的にどの能力がどのように障害されているのか、などの情報を知能検査と合わせて実施することにより詳しく精査するという便利な使い方も考えられます。しかし発達障害を疑って教育機関などで相談しても、対応するカウンセラーはWISKなどの知能検査はできてもそれ以上に精査するための技術を持ちあわせていませんし、さらに詳し検査をした方がいいという認識も持たないのが一般的です。

 脳の機能障害はリハビリも必要ですが、定型発達者や健常者と同じ機能に至ることはまずないと考えて良いでしょう。必要なのは自身の脳機能の特徴を知り、適切な環境を選ぶ参考として重要な情報を手に入れなくてはなりません。そのために有効なツールが神経心理検査なのです。

 

神経心理検査の種類

 高次脳機能障害の場合、注意障害、記憶障害、実行(遂行機能)機能障害、社会的行動障害の特徴的な4つの障害に加えて失行、失認、失読、失書など様々な症状が現れる可能性があります。

 これらの機能障害を確かめるために様々な検査が用意されています。

 このうち頭部に受傷歴のない人でも高次脳機能障害者と同様の症状を人々がいます。後天的に脳に外圧が加わって、脳のある部分が損傷して機能が損なわれるのも、発達不全により脳のある部分の機能が不十分にしか機能しないのも結果として同様の症状を呈することがあると考えられます。しかし発達的に問題があるケースのことがこれまであまり関心が集まらなかったことは先にも述べた通りです。

これらの各症状を調べるために以下のような検査が利用されています。

  • 記憶検査
     WMS-R, ベントン視覚記銘検査 他
  • 注意機能検査
     D-CAT、 ストループ検査
  • 実行機能検査
     BADS、 K-WCST

これらは1例です。

 神経心理検査はたくさんの母集団を調査し、統計的な基準値が定められているものから、標準化はされていないもののリハビリの前と後に実施して得点の変化を比較する個人内差を見るものがあります。

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