心理学は精神医学とは異なるものである、ということはこれまでにも再三お伝えしてきた所ですが、違うからこそ互いに補完し合ってきた歴史もあります。また互いに違うからこそ誤解を受けてきた点もあります。 精神科の中で臨床心理士が働いていることは多いものです。しかし自分の患者がカウンセリングを受けることを快く思わない医師がいるのも事実です。 この辺りのことを整理して果たしてどのような支援が心理学では可能であるのかということについてお話ししてみたいと思います。カウンセリングは病気を治すためのものではない
臨床心理学が台頭し始めた頃、様々な試みがなされました。自閉症を治せるのではないか、との取り組みがなされたこともありました。 同様に統合失調症(当時は分裂病、以下統合失調症に統一)も臨床心理学によって治せるのでは、との期待を持っていたこともありました。 しかしその結果は失敗であったと言わざるを得ないでしょう。そしてしばしば統合失調症の患者の精神状態を不安定にしてしまうことがあり、その主治医に尻拭いをさせてしまう、ということがあったのです。 このことから現在では心理学によって精神病を治す、という考え方は常識的にはされていません。 精神病の患者がカウンセリングを受けるというと主治医が嫌がる、というのはこの辺りの事情があるからだと思います。臨床心理学にできること
では臨床心理学ではどのような支援ができるのでしょうか。 統合失調症の病気そのものはおいて置き、そちらは全く主治医の管理であると割り切ります。 しかし統合失調症の患者にも生活があり、社会的な課題が存在していますし、それらへの対処をしていかなくてはなりません。また病からくる症状があるゆえの活動の難しさも存在しています。 これらの病気に直接アプローチするのではなく、彼らの生活者としての困難さを乗り越える手伝いはどうしても必要になりますし、その相談にこそカウンセラーの出番があると考えられます。統合失調症ではなく、個人と付き合う
カウンセリングでは統合失調症の方の生活上の様々な課題を一緒に考えていくことができるという話をしました。 しかし統合失調症という病名が付いていても誰一人同じ人は存在しません。 当然相談の内容は一人ひとり異なります。 今までに統合失調症の方からは「働きたいのでどうしたら良いか」という相談が寄せられたこともありますが「働く意欲がわかないのに親が働け、仕事しろ、と言ってくるし、働かないで家にいるのは良くないのではないかと思うと苦しくなる」という仕事一つに対しても逆な内容の相談が寄せられたこともありました。 一人ひとりのニーズはこのように全く異なります。 しかし寄せられることの多い相談を以下にいくつか挙げてみるのも参考になるかと思います。 家族との関係 HiEE,という言葉があります。家族の中に患者に対して感情的になりがちな状況が高いほど患者の病状が増悪しやすい、という研究があります。このような研究を引き合いに出すまでもないことですが、家族とのつながりは個人に対して強い影響力を持つものです。患者という立場になれば尚更のことです。家族とどうやって付き合っていくか、は非常に重要なテーマとして数多く相談されることが多いのです。 仕事をどうするか 統合失調症の方の中には仕事をリタイヤしたまま復帰するのが困難な方が多くいます。生活保護を受けたり親に扶養されたりと様々ですが、家族から仕事に就くことを強く求められてストレスが高じると症状が増悪する、ということを繰り返している方もいます。 また就職するにしても病気をオープンにして活動するのか、それとも隠したまま仕事をするのか、などどのように働くか考えなくてはならないことがたくさんあります。 職場等の人間関係 統合失調症の方は対人関係が苦手であるという場合が珍しくありません。家族との関わりについては上述した通りですが職場での人間関係なども重要な課題で、どのように接してよいのか上手く関われないで困難を感じていらっしゃる方も多くいます。 病気や症状との付き合い方 病気の症状として幻覚や妄想などを持つ方が多く、基本的には向精神薬で対応するものと思いますが、時にこれらとどう付き合うか、というテーマがカウンセリングで扱われることがあります。