アドラー心理学実践による被害!?

フロイトやユングの名前は有名でしたがアドラー心理学は専門家でも「権力への意思」というフレーズ程度にしか知らない、というものでした。

岸見一郎氏が2013年12月12日に一般書として「嫌われる勇気」を出版して以来、一部の非専門家の強い関心を呼んで今に至っています。

その後アドラー心理学について多くの書籍が出版され、関心の高まりとともに実践報告などもインターネット上で多くあらわれてきました。

その中には本記事のタイトルの通り「アドラー心理学は効果がない」「アドラー心理学でひどい目にあった」「アドラー心理学は誤っている」という主旨の記事も時々目にするようになりました。

勿論アドラー心理学が完璧な思想、技法を備えているとはアドラー心理学の提供者側にいる私たちも思ってはいないのですが、批判的研究のために関心を寄せてそれらの記事を読むこともあります。

ですが今まで拝見した批判は的外れというしかないものであると言わざるを得ませんでした。

アドラー心理学の誤用例

①アドラー心理学では褒めることを否定しているから褒めることをやめたら家族関係が悪化した

②アドラー心理学は無条件の信頼を説いていので無条件に部下を信頼して業務上巨額の損失を発生させた

③アドラー心理学の言うところの共同体感覚の無い人とはアドラーの時代には認知されていなかった発達障害の人たちである

理解不足であることを自覚していない

先ずアドラー心理学は本を読んだだけで身につくようなものではありません。カウンセリングについて話をしていると多くの人が数学の公式を覚えて応用させるように利用できるようになると自分でも気が付かずに大前提にしています。

ですから学んでうまくいかない、と思われるのでしょう。

しかし野球やバスケットボールを本を読んで上手くなろうと思う人はいないでしょう。

カウンセリングは知的な活動なので数学の公式のようなものとのアナロジーを連想するのでしょうけれど、コーチについて繰り返し繰り返し学習する種類のものです。

上記①②の間違いはそれをせずに本で読んだ自分の解釈が正しいものだと信じてうまくいかないとアドラーのせいにしていますが、自分の理解が誤っているとは考えていません。

①の場合アドラー心理学では褒めるのではなく勇気づけをせよ、と推奨するのですが、褒めるのをやめただけで勇気づけをされていませんでした。

②の場合も大人が単純な理解をすべきものではないものを単純に理解しすぎています。失敗したら莫大な損失の発生するものを根拠なく信じるのは愚かなことです。

全くの的外れな見解

③も全く的外れなものでした。

自分が物事の気づかれていないある側面を発見したと思うと誇らしく感じてそうであるに違いないと思うのはわかるのですが、全く違います。

共同体感覚の乏しい人というのは医学的な意味での障害のない人の中にもたくさんいます。ナチスでユダヤ人を迫害していたような人たちには共同体感覚は乏しかったのだろうと思うのですが、彼らの大方は精神医学的な意味では健常者ではないでしょうか。

発達障害のある人達の中にも共同体感覚のある人は多くいると思います。

障害の有無にとらわれた概念ではないのです。

浅薄な解釈でアドラーが貶められるのは残念でなりません。

アドラーで子育ては無理!!か?

「アドラー心理学 子育て 無理」

このキーワードで当HPにアクセスが複数あったことからこの記事を書いてみようと思い立ちました。

おそらく①②に共通の本だけ読みました、ではないかと思っていますが、もしかしたらパセージをギブアップされた方かもしれない、と書いている途中思いました。

passageはアドラー心理学のグループ子育て学習プログラムですがプログラム推奨後は自助グループに定期的に参加して学ぶことを推奨しています。

学んだものの応用が利くようになるためにはやはりそれだけ時間がかかります。

プログラム終了後に自助グループには参加されない方も多くいらっしゃるのも事実です。その方たちの多くはアドラー心理学に食らいつくほど子育てには困っていらっしゃらない方ではないかと思っていましたが、もしかしたら違うのでしょうか。

アドラー心理学では子供にどのように語り掛けるのが良いか、という表現の工夫の提案もありますが、その真意は子供にかかわる親側の成長を前提にしています。

それが伴わないとき、口先アドラー、というスラングで呼ばれることがあります。成長を感じられるほどアドラー心理学を体の中に通すのは本を少々読んだだけで可能なことだとは思いません。

アドラー心理学を学ばれる多くの方は自らの子育てを入口とした方が圧倒的に多いです。お母さん方が成功されているプログは今ではたくさん見つけることができるでしょうし、ブログを書いていない方もたくさんいらっしゃるはずです。

その人たちはちゃんと自助グループに参加されている方々だと思います。

真剣に何かを身に着けようと思ったら、どんなことでもそれなりのコミットメントが必要になるのではないでしょうか?